ファラオの小部屋vol.8
ゴールデン街ホラーズという怪談師ユニットのインディさんが、よくわからないトークライブをするよということで雨の中ゴールデン街劇場へ行ってきた。
お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の平井"ファラオ"光との初顔合わせ、ぶっつけ本番でのイベントとあって、トークの内容は怪談から海外、映画、そして音楽へと筋書きなく変転していく。
途中いいなぁ、と思ったのはインディさんの怪談論。オチに拘らず、語られている怪異のイメージを聴いている人に植えつけて共有できたらそれは素敵なことではないかというスタンスでやっていると言う。
確かに怪異の何に惹かれるかといったら、不条理さであり、それは日常と非日常の組み合わせだ。組み合わせの軋みが妙であればあるほど印象に残ってしまい、夢に出てきたり、場合によってはその再現を期待したりする。
オチてしまうとイメージが祓われてしまうから、それは寂しいことかもしれない。
トークライブ後はバーで映画「寝ても覚めても」がシネフィル的にいい、と、5回ぐらい語る人に洗脳され、ころりと観に行きたくなった。
シネフィルなんて死語じゃない?とバーのマスターに茶化されても、その人は「おじさんだから使っていいんだよ」と一歩も引かなかった。
「大根だと思っていたんだけれどこの役者はすごいね」と語られた役者は東出昌大で、わたしは彼について全く同じようなことを語っていた女性を思い出した。
「聖の青春の東出くんがよくってねぇ。ハマるときは本当にハマるのよ」
なんて熱に浮かされたように語っていたっけ。
そのように人に語らせること、それ自体も怪異みたいなものだなと思う一夜だった。